帰国から2週間が経ちましたが、少し落ち着いた頭で1週間のデンマーク視察について簡単に報告をまとめたいと思います。
神谷はなぜそんなに外国をまわるのか?
29歳で政治の世界に入ってから、もう30カ国近く外国を視察で回っています。まず、なぜ私が外国を回るのかを少し簡単に書いておきましょう。
*その1 私の政治の原点が海外経験にある
私は21歳で海外に語学留学に言った時、外国人の学生から「お前は日本人としてこれからの日本をどうしていきたいと考えているのか」と問われ、答えれなかったことから、日本や政治、教育について考えるようになりました。それ以来、海外に行くと新しい視点が自分の中に生まれるという想いをもつようになりました。
*その2 日本人の常識が世界の常識ではない
日本から出ない人にとっては日本の常識が、その人が生きる世界の常識になります。しかし、一歩世界に出れば日本の常識を振りかざしても生きてはいけません。「郷に入れば郷に従え」です。自分が今まで絶対だと思っていた概念を私は海外で何度も砕かれながら、そのたびに頭の新しい回路が繋がるような経験をしてきました。これだけ簡単に世界に出れる時代に日本人の24%しかパスポートを持っていないんですから、もったいないです。
*その3 将来の日本の形を考えて提案したい
2010年から私は仲間と龍馬プロジェクト全国会という政治団体を運営しています。なぜ龍馬の名前を借りたかというと、彼が仲間と共に「船中八策」というその後の日本のビジョンをまとめたことを見習いたいと思ったからです。龍馬は日本にいながら世界の情報を集めましたが、私は仲間を連れて現地にいき、自分の肌で感じた習慣や制度を上手く組み合わせて、戦後復興の次の日本のビジョンを皆さんと考えていきたいのです。
デンマークってどんな国?
人口 570万人 (北海道の人口540万人)
面積 4万3000km2 (九州の1.2倍)
国民一人当たりGDP 52000ドル 世界第9位 (日本 32500ドル)
エネルギー自給率 90%台 *1972年当時は2~3%
食料自給率 100%以上 データの取り方によれば300%とも
国民幸福度 世界第1位 (2位スイス 3位 アイスランド) *http://worldhappiness.report/
2冊の本をオススメします。
どんな視察をしてきたの?
視察の大きなテーマは「女性の社会進出と幸福度」。女性の8割近くが働いているというデンマークの社会システムや教育制度について、約20名の皆さんと共に学んできました。
龍馬プロジェクトからは杉田水脈前代議士と上原弁護士が参加。
毎日の気づきについてはブログを毎日書いたのでこちらをご覧下さい。
また、一緒に視察に参加した杉田水脈前代議士は、産経ニュース二レポートも書かれていますので、こちらもご参考に。
・女性の社会進出が進むデンマークへ視察に行ってきました 日本の方が恵まれていると感じたこと
・「民主主義は進み、妥協するのが下手になった」…デンマークで聞いた興味深いエピソード
・デンマークに日本が学べることはそう多くありませんでしたが…
今回の団長を務めてくださった伊勢さんのFB記事も読み応えがあります。
・ttps://www.facebook.com/iseryuichiro/posts/1124750814287650
・ttps://www.facebook.com/iseryuichiro/posts/1130817823680949
同じものを見てもこんなにも人によって捉え方が違うのですから面白いものです。
神谷はデンマークで何を何を考えたか?
・働くということと経済
今回の視察は、デンマークの女性の社会進出と幸福度についてがメインテーマでした。
まずなぜデンマーク人の幸福度が高いかと言えば、社会保障が充実していて将来に不安がないからだと私は捉えました。教育も医療も介護も国が面倒見てくれれば、確かに不安はないです。しかしその分収入の50%~70%を税金として支払わねばなりません。その税金を国民に払ってもらうために、女性も8割近くが働かねばならないのです。
デンマークでもやはり女性は子供ができたら少しでも一緒にいたいと思うそうです。しかし、日本のように専業主婦にはほとんどなれないとのこと。なぜかというと働いていないと「社会を支えることをサボっている」と思われるからだという意見を聞き、少し納得できました。女性の社会進出は日本でもどんどん進めていけばいいと思いますが、女性が専業主婦でいたいならそれを認める選択肢も残していきたいと思います。
また、デンマークは公務員が50万人もいます。就労人口の10%以上が公務員でその8割が女性と聞いてビックリしました。確かにこれは合理的です。公務員は経済競争しなくていいので、シェアワークをしていくにはうってつけの仕事。産休などもしっかりとれます。日本ほど給料は高くないし、解雇もあるとききました。そうして待遇レベルを調整しながら女性に行政サービスを支えてもらうのは日本でも検討すべきかもしれません。
さらに、デンマーク人の労働時間は週37時間で、残業などは厳格に給与加算がされるので、雇用者は労働者にいかに残業をさせないかを考え、仕組みを考えています。1900年ごろはデンマーク人も週平均60時間働いていたそうで、それを目標を決めて37時間まで減らし、今後も30時間くらいまで減らそうと検討しています。
私は日本は資源のない国だから、日本人は長時間働かないと国の経済を維持できない、働くことは日本人の美徳だと教えられ、今でもそう思っています。しかし、この20年日本人は一所懸命働いているけれど、経済は全く成長しない。逆に労働時間を減らしてきたデンマークやスイスなどの方が経済成長しています。国の経済の成長と国民の労働時間は必ずしも比例しない現実をデンマークで見せつけられました。デンマーク人は、仕事の時間を制限し、その分親は子供の教育に関わり、地域活動などにも積極的に参加します。日本もそこは見習うべきではないでしょうか。仕事ばかりで、そうした活動に大人が参加しない現状は決して日本にとって良いものではないと感じました。
・一人の人間の力の大きさ
国策だった原発推進をやめさせた人物に出会い、一人の人間の力の大きさを認識できました。私も日本の社会を変えたいと願っていますが、具体的な戦略をもって、効果的に活動ができてきたかと問われれば、答えはノーです。
今回お聞きした社会運動の手法は日本でもそのまま使えるものだと思います。大きくことを動かすには、まず国民に情報を知らせてみんなに考えてもらうことが大切です。それで国のエネルギー政策すら変えてしまうわけです。私も色々な失敗をしながら、漠然とそこにたどり着こうとしていたタイミングで今回のお話がきけて、大きな勇気をもらいました。
今回の視察で政治家の仲間に共有したかったのはこの部分です。
・目標を決めて、やれるところからやる
日本にはビジョンがない、と龍馬プロジェクトを始めた時から言い続けてきました。6年ほど前にシンガポールに行った時も、国家が計画を持って進んでいることにショックを受けましたが、それはシンガポールのような強権政治ができる国だからかと思ってきましたが、やはりそうではなかった。デンマークでも、カーボンニュートラルの国にするとか、再生可能エネルギーの比率を上げるとか、与野党の政治が合意をし国民を巻き込んで目標の設定をしています。
その先にある大きな目標は、国家の自立と継続と国民の幸せだと感じました。例えばデンマークでは、医療と教育ではお金儲けをしてはいけないという価値観があり、そこには国民の利益の追求が見て取れまました。
一方の日本はどうですか?医療も教育も完全にビジネスです。患者も子供も消費者にされてしまっている。医者も先生もかつては聖職者と言われていましたが、今は誰もそう思えない現状があります。これは明らかにおかしいでしょう。
日本にはやはりビジョンが必要です。そしてそこには倫理と夢、そして国民の幸せがなければいけない。そんなビジョンをもう一度掲げて、小さな自治区からでもいいから実践を始めていく必要があるでしょう。実践する人がいれば、不可能だやっても無駄だというニヒリズムはなくなります。もちろん既存の利権との戦いも生まれるでしょう。しかし、そこは国民の総意で乗り越えていく必要があるのだとデンマークで学びました。
・民主主義は教育から始まる
デンマークでは、もう幼児の時から子供たちに考えさせています。自分は何をしたいのか、どう考え、どう生きていくのか。大人は愛情をもってその力を子供に付けることを実践しています。
日本でいう小学校の段階では、大人の意見も鵜呑みにせず、自分の考えや意見をちゃんといえるトレーニングを受けます。中学校の段階では、マスメディアの実態や、各政党の政策、デンマークと世界の近現代史、民主主義のルール、自分の国の教育制度などをしっかり教わり、18歳になったら選挙に投票できるだけではなく、自ら立候補もできるのです。
なぜなら18歳でデンマーク人は親の庇護をうけず、自立し、自分で自分のお金を稼ぐようにシステムが組まれており、18歳で1人前なんです。
しかし、教育の機会はしっかり確保され、高校を出た後や大学を卒業した後にはモラトリアムがしっかりと用意されていて、世界を旅行したり、専門技術を磨いたりしながら世界の仕組みを学び、自分に何ができるかを考える時間があるのです。その代り30歳前に起業に入るときには、もう若いからと甘えられません。即戦力として働けるスキルがなければ、会社に入ってから教えてもらえるなんて生易しいことは言えないのです。
こうしてデンマーク人は個人として自立させられ、働けばしっかり高額な税金を払います。しかし、税金が高額であることに不満はありません。なぜならその使い道を自分たちでチェックし、自分たちに還元されるのを確認しているからです。デンマークの選挙の投票率は世界一高く、最低でも8割多い時には国民の9割が選挙に行きます。日本の倍ですね。デンマーク人は選挙の時だけではなく、普段から政治家と関わり、選挙で選んだ後も政治家を育てようとします。
政治のの不正は絶対許しません。なぜ政治家と関わり、育て、不正を許さないか。それだけの税金をメンバーの一員として納めているからです。参加意識があるからです。
日本人が忘れたものは、チームの一員としての自覚と責任感ではないでしょうか。
彼らは、小さいうちから教育で、チームのメンバーを育成し、メンバーがリーダーを育てています。
まとめ
少しは皆さんにも我々の視察の学びが共有できたでしょうか?
もちろんデンマークのすべてが日本より優れているとは全く思いません。日本の方が優れていることもあるし、デンマークの制度をそのまま持ってきても日本には当てはまらないでしょう。
それでもデンマークには来年も視察にいこうと思います。デンマークだけでなく、イスラエルやオランダ、できたらアイスランドも。
これらの国は「人口が少ないからできるんだ」といって思考停止させずに、日本でも取り入れられるよいアイデアは自治体単位でもいいからやっていけばいいと思うんです。
一人の運動からでも国の政策が変えられた例を私は見てきました。
やってできないことはない。私もがんばっていきます。