セクションごとの対立は戦前にも見られたこと。
予算の取り合いが、総合的な力を弱める。
いつの時代も同じなのかも知れませんが、、歴史には学ぶべきでしょう。
また、北岡氏がなぜこの役職につくのか??
私にはそれが疑問でなりません。
要チェックの人事だと考えています。
自衛隊で内紛勃発 対中有事めぐり四分五裂
2013.9.16 18:00
7 年末に予定する「防衛計画の大綱(防衛大綱)」改定に向け、政府の検討作業が大詰めを迎えようとしている。4度目の改定となる今回は「戦闘モード」を強く意識した内容となる見込みで、検討に用いた手法では画期的な転換を図った。
ところが、ここにきて不穏な兆候が出てきた。陸海空3自衛隊の制服組(自衛官)で「内紛」が勃発し、背広組(内局官僚)も制服組に横やりを入れる。陸自にとっては天敵といえる政治学者の「口先介入」の恐れもあり、防衛大綱改定をめぐり四分五裂となりかねない様相だ。
■初めて採用された「統合」有事シナリオ
防衛大綱はおおむね10年先を見据えた安保政策と防衛力整備の基本方針。防衛省は7月、省内で検討してきた改定案に関する中間報告を公表した。
中間報告の中に注目すべきキーワードがある。
「統合運用を踏まえた能力評価」
「統合運用」は3自衛隊を一体的に運用することを指し、「能力評価」は3自衛隊の総合的な戦闘能力に対する評価だ。
つまり中間報告をまとめるにあたり、迫り来る脅威に3自衛隊はどこまで対処可能で、対処できないとすれば何が足りないのかを検証したわけだ。
至極当然の作業のようでいて、「画期的な転換だ」(海自幹部)と指摘される。
これまで大綱改定にあたり陸海空はそれぞれバラバラの作戦計画をつくり、それに基づき装備を導入していた。自ずとシナリオは我田引水になり、導入して無駄に終わった装備も少なくない。
今回はそれを抜本的に改め、制服組として3自衛隊共通の有事シナリオを初めて策定。そこから必要な装備体系と運用指針を導き出すことにした。
■海・空優先で排除された陸
有事シナリオは、中国による尖閣諸島(沖縄県石垣市)など南西方面の離島への侵攻と、北朝鮮の弾道ミサイル攻撃の2通りある。
これはいま最も起き得る危険性の高いシナリオであることは間違いない。中国の公船や航空機が日本の領海と領空に侵入し、北朝鮮も昨年12月の長距離弾道ミサイル発射で能力を著しく向上させたことを実証したからだ。
仮に中国軍が尖閣を奪取しようとすれば、艦艇や戦闘機など海・空戦力の展開が中心になる。ただし最終段階では上陸部隊として空挺部隊や水陸両用戦車も投入してくるとみられる。
これに対応するためには海自と空自が中心になるのは当然だ。シナリオもそうした内容だったが、陸自には強い不満がくすぶる。
「あまりに陸自の出番が少ない」
海・空自には、中国側の増援部隊の艦艇や航空機が展開してくるのを海・空戦力で封じ、先に投入された艦艇や上陸部隊を孤立させられると主張する声が多かった。「離島を奪還するために陸自部隊が上陸するような作戦は想定する必要がない」と言い放つ幹部もいたという。
北朝鮮の弾道ミサイル攻撃への対応にも陸自は納得していない。
北朝鮮がミサイルを日本に着弾させるようなケースでは、同時に原子力発電所のようなインフラ施設にテロ攻撃を仕掛けてくる「複合事態」も想定される。だが、有事シナリオはミサイル対処に限定された。
シナリオは陸自がテロリストを掃討する作戦に踏み込まず、「陸自排除」が貫かれた、というのが陸自の言い分だ。
■「戦略」つぶしにかかる背広組
もっとも、海・空自には陸自に対し、「海・空戦力が中心になる脅威と対処のありようを直視し、シナリオと作戦構想に歩み寄るべきだ」(空自幹部)との不満もある。
防衛大綱の改定案がまとまり、閣議決定されるのは12月になる見通し。今後3カ月、陸自の巻き返しと海・空自の抵抗という構図の攻防が激化するはずだ。
さらに厄介なことに、制服組同士の内紛に触発されたのか、背広組も口を挟んできた。
実は、制服組が統合有事シナリオを作成したのは、制服組が主導する「統合防衛戦略」の策定につなげるためだった。統合防衛戦略を米国の「国家軍事戦略」に相当する戦略文書と位置づける狙いがある。
しかし、背広組が待ったをかけた。統合防衛戦略の策定を認めれば、制服組の権限拡大につながると嫌がり、潰しにかかっているというのだ。
こうした防衛省内の内ゲバにとどまらず、場外乱闘が勃発する恐れもある。
■門外漢の政治学者も参戦か
安倍晋三首相は外交・防衛・経済の3分野を軸にした包括戦略となる「国家安全保障戦略」を初めて策定する方針を固めている。それに向け、盛り込むべき戦略の内容を議論する有識者会議を設置、座長には北岡伸一国際大学長を充てた。
北岡氏の名前にアレルギー反応を示す陸自幹部は多い。
平成22年、民主党政権が初めて防衛大綱を策定した際、「政治主導」を掲げながら自前で大綱案をまとめあげる能力がなかった。
そこですがりついたのが北岡氏で、「関係閣僚協議」という重い場に極秘に同席させた。
陸自は、北岡氏が関係閣僚協議に出席し、防衛大綱で定める防衛力のあり方に口出しすることに激怒した。その頃、北岡氏が陸自の人員削減を唱える論文を発表していたからだ。
「軍事が専門でもない政治学者に自衛隊の編成・装備にまで意見を求めるのであれば問題だ」
当時、陸自幹部は口をそろえて批判していた。
年内にも策定される国家安保戦略は防衛大綱より上位に位置づけられる戦略文書で、防衛大綱は安保戦略の「縛り」を受けることも避けられない。
国家安保戦略に関する有識者会議座長というポストを得た北岡氏が、またぞろ自衛隊の編成・装備に注文をつけない保証もない。
背広組も「軍事の門外漢」と断じる北岡氏の発言力が防衛大綱にも必要以上に反映されるようだと、せっかくの有事シナリオも浮かばれない。(半沢尚久)