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神谷宗幣 (かみやソウヘイ)
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家族を外国に逃がす共産党幹部

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この記事は私が知り合いの中国の方から聞いた話とかなり重なります。

八千数百万人の共産党員の数と5%の富裕層はかなりリンクします。

私はよく、中国を日本と同じ国として見ては駄目だと学生なんかには話します。

新聞に中国と書いてあれば、それは中国共産党と読み替えないといけないことが多いと。

党の運営、軍の管理、人民の人心把握、難しい舵取りの失敗が日本にマイナスの影響を与えないことを祈るばかりです。

家族を外国に逃がす共産党幹部
習近平政権は中国社会を「持続」させられるのか

2013.04.02(火)JBPRESS

  習近平政権が正式に誕生した。その誕生プロセスは国民とはほとんど関係がなく、長老政治家をヘッドとする派閥政治ゲームの結果だった。政権の一人ひとりが適材適所で選ばれたわけではなく、「どうしてこの人が」と首を傾げてしまうような、正当性を説明できない者が多い。かつては毛沢東も鄧小平も自らの力で政権を手に入れたのであり、指導者としての正当性を説明できた。

 習近平国家主席や李克強首相らは公式メディアやインターネットで若き時代の写真を多数公開し、親民的指導者のイメージを国民に植え付けようとしている。それは自分たちに正当性とカリスマ性がないことを自覚しているからだ。

 確かに、胡錦濤も習近平もカリスマ指導者ではなく普通の人である。問題は、普通の人が国家の指導者としてきちんと政治を行うことができるかどうかにある。

 日本のマスコミや中国政治の専門家の多くは、中国政治を分析する際、往々にして共産党指導者個人について改革派、保守派、青年団派、太子党、上海閥といったグループ分けを熱心に行うようだ。しかし、共産党指導者個人の出身、所属と政治信条などは決して白か黒かのように安易に分けられるものではない。

 例えば新しく外相に就任したのは王毅元駐日大使であるが、日本のマスコミでは、王毅元大使は日本語が堪能で親日派と位置づけられている。このような浅い見方で中国政治を考察してよいのだろうか。常識的に考えれば、一国の外相は自国の利益を最優先にするに決まっている。要するに、政治を分析するときは、ヒトよりもコトを重視すべきであろう。

「チャイニーズドリーム」に反応しない国民
 
習近平国家主席が指導者として政治をきちんとやっていくためには、長老の支持はもとより国民の支持を得ることが重要である。

 振り返れば34年前、鄧小平は国の開放を決めた際、長老らによる猛反対があったにもかかわらず、「改革開放」を決断した。それができたのは国民の強い支持があったからである。

 習近平党総書記は2012年11月就任式の記者会見で「中華民族の復興」を唱えた。さる3月に開催された全人代での演説でも、再び「中華民族の復興」を唱えた。あえて言えば、これは習近平国家主席が国民に約束しているチャイニーズドリームであって、国民にとっての夢ではない。

 中国経済はすでに世界第2位にまで成長している。その現実を見れば、中華民族はすでに復興しつつあると言っていいのではないだろうか。問題は、国と民族が復興しても、国民の大多数を占める都市部住民の多数と、農村部住民のほぼ全員が復興のメリットを享受していないことにある。
今回、10年ぶりの政権交代があったが、「ゴム印」と揶揄されている全人代での投票ではほとんど反対票が出なかった。ほぼ全会一致で習近平国家出席と李克強首相およびその他の指導者が選出された。

 かつて李鵬元首相と朱鎔基元首相が選出された際は、1割近い反対票があった。今回の全人代で反対票がほとんど出なかったのは、候補者の人気によるものというより、「反対票を投じても仕方がない」というあきらめムードのせいか、もしくは反対票を投じた者への粛清を恐れているかのいずれかである。

 いずれにせよ、習近平政権が前途多難であることは間違いない。習近平政権の使命は、共産党による国家統治を何としても堅持していくことである。だが、国民の共産党への信頼はすでに失墜している。

 2012年10月に、ニューヨーク・タイムズは温家宝前首相の一族が27億ドルの蓄財があったと報じた。この件について、共産党の規律委員会は調査するどころか、国内ではマスコミの報道すら許されず、海外のインターネットでこの報道に関連するサイトへのアクセスが完全に遮断されている。これでは、習近平政権になったところで、国民の大多数の夢は実現できない。悪夢にうなされるだけである。

改革が行われなければ革命が起きる

 振り返れば1949年、毛沢東は蒋介石から政権を奪い取った際、国民に「平等な社会」と「連合政権」の構築を約束し、国民から広く支持を得た。毛沢東の時代は、平等こそ実現したが、国民の大多数はみんな貧しかった。

 一方、複数の政治グループによる連合政権の構築は実現せず、幻となった。反右派闘争など度重なる政治運動の結果、中国政治体制は共産党一党独裁の政治となった。

 34年前に始まった「改革開放」政策は経済改革こそ行われているが、政治改革は一度も着手されていない。経済の自由化と経済発展の結果、共産党幹部の権限は大幅に増強されたが、その権力を制禦するメカニズムが用意されていない。そのため、政治腐敗がますます横行するようになった。地方政府長官のレベルの腐敗はすでに億元(約15億円)を突破している。

 政治の腐敗は、政府が国民からの信頼を失う一番の原因である。にもかかわらず、歴代指導者は政治改革の必要性を認めながらも、それを先送りしてきた。先送りされた背景には、共産党への求心力が低下する中で民主主義の政治改革を実施すると、共産党の存在そのものが危うくなることがある。

 共産党はその指導体制を維持しようとしているが、国民の信頼を失い、共産党への求心力が急速に低下している。これまでは経済発展を促すことで党への求心力の向上を図ってきた。だが、経済が成長して国が強くなっても、国民の大多数はその富を享受できていない。その結果、社会主義の理念が崩れ、共産党の存在が疑問視されるようになったのである。

結論を言えば、このままでは共産党の独裁政治は持続不可能である。共産党指導部は政治改革を拒んでいるが、改革を行わなければいずれ革命が起きることになるだろう。中国政府と中国共産党が直面しているのは、「改革か、革命か」の二者択一の選択である。

このままでは持続が望めない中国社会
 かつて国民の大半は
「平等」という毛沢東のユートビアを信じて共産党を支持した。だが、毛沢東が描いたユートピアは完全に崩れてしまった。

 わずか34年間の「改革開放」政策でGDPは世界2位にまで成長したが、共産党は建国当時の理念をほとんど実現せず、単なる国民の監視を受け入れない独裁政権を続けているだけである。

 当たり前の結果だが、ごく少数の特権階級が富の大半を支配している。このような社会が持続不可能であることは指導者自身もよく知っているはずである。それゆえ、共産党幹部の多くはその子供を欧米諸国へ留学させ、さらに移住する者も少なくない。

 中国のインターネットで「裸官」(裸の幹部)という言葉が流行っている。すなわち、共産党幹部は妻と子供を海外へ移住させ、たった1人で国内に残り稼ぐ。ただし稼ぐといっても、収賄など違法な収入で稼ぐということである。いざ危なくなると、視察などの名目で海外へ逃亡する。1人なら逃亡しやすいから、裸官として国内に残るのだ。

 ある推計によれば、中国から海外へ毎年数百億ドルの外貨がフライト(逃避)していると言われている。そのほとんどはこうした裸官らによる親族への送金と見られる。

 いかなる社会でも同じだが、経済発展と社会の安定を持続するには、中間所得層の台頭が必要である。現在の中国社会では、少なくとも60%の低所得層は経済発展のメリットを享受していない。一方、約5%の富裕層が国全体の70%以上の富を支配している。

 中国社会の安定と繁栄を持続するためには、まず特権階級の特権を打破し、富の分配を徐々に平準化していかなければならない。最低でも、国民の30~40%が中間所得層になる社会環境を醸成していく必要がある。

 北京の中南海は、指導者らの執務室や住居が集まる場所だが、その正門の新華門に「為人民服務」(人民のために奉仕する)という共産党のスローガンが書かれている。しかし、今の中国社会と政治の現状を見ると、人民が共産党のために奉仕させられていると言わざるを得ない。これでは「共産党が人民の政党」というのは誰が見ても嘘に聞こえる。

 習近平政権はこのような崖っぷちに立って、国を救うか、共産党を救うか、という究極の選択を迫られている。

柯 隆 Ka Ryu
富士通総研 経済研究所主席研究員。中国南京市生まれ。1986年南京金陵科技大学卒業。92年愛知大学法経学部卒業、94年名古屋大学大学院経済学研究科修士課程修了。長銀総合研究所を経て富士通総研経済研究所の主任研究員に。主な著書に『中国の不良債権問題』など。

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