鹿児島視察に参加して 文責:松崎千夏・平充宏
■ 阿蘇神社参拝・水基巡りの道
阿蘇神社参拝
九州視察の始めは阿蘇神社の参拝でした。
阿蘇神社の説明をいただいた後、阿蘇神社の現状を教えていただきました。
神社を維持するには、多額の費用がかかります。そのため、国からの補助金が必須です。
しかし、国が補助金を出すのは、補助を出すに値する価値が見いだせる場合、
すなわち観光地となるか、なのです。住職の方としては、神社は宗教や歴史の象徴として
保護したいと考えていますが、それでは利益が上がらず、国に補助金を出してもらえないのです。
神社の維持のために、国の意向に沿って観光地として売り込んでしまうか、宗教や歴史の面を大切にするか、
阿蘇神社だけでなく、全国のほとんどの神社や寺はこの苦しい選択に迫られているようで す。
しかし私は、その中間点がある気がします。神社を通して歴史や宗教を学べるような、
子供でも理解できるパネルの設置や、住職の方のお話を聞きながら参拝することなどです。
日本人が日本を知ることは当然の事。
日本の良さを、国民の身近にある寺社から発信できればよいな、と感じました。
水基巡りの道
阿蘇神社参拝後、すぐ隣にある商店街を訪れ、この商店街の活性化に取り組まれた
宮本さんに案内していただきました。
そこは、もとは誰一人寄り付かないシャッター商店街だったようです。
しかし、宮本さんと他2人の方が中心となって、商店街の活性化に取り組まれたのです。
電柱や電線など現代的なものを隠し、景観をそろえるための木や黒で統一された看板。
水がきれい、 という特徴を生かした水飲み場やサイダーのお店。無料で貸し出す番傘。
新たに何かを作るのではなく、もとからあるものをうまく利用する、
そんな工夫がこの商店街には溢れていました。
最初は3店舗の食べ歩きから始まりましたが、今では時計屋や雑貨店、様々な飲食店も入り、
賑わっています。商店街には珍しい公衆トイレも、自分達で維持する、と約束して設置されました。
将来は、車の通行をなくして、地域のコミュニティースペースにしたいとおっしゃっていました。
地元を元気づけたいという気持ちと、今までにない発想力が地域活性化のポイントだと思います。
また、周りに何と言われようと自分の思いをしっかり持って自ら行動し続ける強さも大切だと感じました。
案内をしてくださった宮 本さん、おいしい料理を出してくださったお店の皆さん、ありがとうございました。
文責:松崎千夏(神谷インターン10期生)
■ 熊本県教育庁社会教育課家庭教育支援班の家庭教育支援事業について
24日の午後は熊本県庁にて、熊本県教育庁社会教育課家庭教育支援班と
子ども未来課の家庭教育支援事業についてのお話を聞きました。
この教育支援事業は、平成15年にスタートした子育てについての電話相談を皮切りに、
同年に「愛としつけ-子供を育むキャンペーン」を開始した後に同17年に、
「くまもと家庭教育10か条」の制定、同19年に「熊本県子ども輝き条例」が制定されました。
平成18年に教育基本法に家庭教育を規定されてからは、前述の2つの条例を踏まえた
「くまもと『夢への懸け橋』教育プラン」(平成21年)等を掲げると共に、
同年に「くまもと『親の学び』プログラム」をスタートしているとのことでした。
前述の2つの条例は、行政だけで子供の周囲環境に対する取り組みを行うのではなく、
県民にも子供の育みを支えることを目的として制定された、ということでした。
行政だけが考えるのではなく、当事者でもある熊本県民がこの取り組みに参加することで、
現場のニーズにも応えられ、より条例やキャンペーンが県民にとって身近に
感じられるのではないでしょうか。
また、担当者の方は、熊本県としてはプログラミングをするだけで、その後については
各自治体に任せるとのことでした。この方針も、1から各市町村に投げやりに任せるのではなく、
かといって県が統一した内容を提示することで各市町村の現状に合わないものが
できてしまうことも防げる、という2点の意義があるように感じました。
ただ、この熊本県の家庭教育支援事業も、10か条の条文内のフレーズに「肥後っ子」と
あるくらいが熊本ならではであって、本来ならどの自治体が条文、憲章化しても
おかしくない内容でした。大津のいじめ問題によってさらに注目される教育、
子育て問題に対する解決を学校だけでなく家庭においても求められるからこそ、
健康で健全で元気な子供を過程で教えることのできるマナーやルールを大切に
するべきであり、また多くの人にくづいて大切にしてもらうためにも、
まずは条例や憲章といった形で誰もが見ることのできるようにすることが重要では
ないでしょうか。子どもの教育の問題は学校だけでなく家庭においても考えるべきでは
ないでしょうか。
そしてこれらのことを各自治体が率先して、地域住民を巻き込みつつ
取り組んでいくべきではないでしょうか。
■鹿児島県鹿屋市柳谷町の「やねだん」視察
「やねだん」は行政によることなく、代表の豊重さんが、協力を命令することなく、
感動させることで感謝し、また納得させて人々を動かして街を動かしたそうです。
人を説得して動かすのではなく、まず感動してもらう。
そのあとで豊重さんの考えに納得してもらって共に行動していく。
その人の巻き込み方が自然で、心に訴えていく手法がとても感銘を受けました。
またアーティストの方を空き家に移住してもらうキャンペーンも行い、現在7名が移住しています。
アーティストとしては静かな環境にて制作活動に専念できる。
さらには自分の作品を売ることのできる環境を整えてもらえる。家賃もほとんど払わなくてよい。
とアーテイストからしてみればメリットが様々あり、また町からしても地域に子どもを
増やしてもらえる。このように相互にメリットがあって、この発想も非常に考えられました。
街中を歩いていて町の方々に出会えるかと思っていましたが、1人も出会えませんでした。
その代り空き家に移住してきたアーティストの方々のお話を聞くことができました。
それでも「やねだん」が紹介された映像にて老人の方々が元気に過ごしていられるという
印象とのギャップを感じていたので、まだ「やねだん」にも課題があると感じました。
それでも町の人々を健康に幸せにできている現状を見て日本に必要な姿であると強く感じました。
「やねだん」だからこそ個人的にできたと思ってはいません。豊重さんのような地域に対して
熱い思いをもってまず行動できるリーダーがいれば「やねだん」とは違うやり方かもしれませんが、
行政になるべく頼ることなく地域、街を活性化することは可能であります。
その思いは豊重さんもお持ちで、故郷創世塾を開催され、各自治体の首長や大学生に対して
このリーダーシップの教育にも熱心にされていました。地域を再生させようという思いを
持ったリーダーが多く生まれれば、日本の地方も明るい未来が待っているもの、と感じました。
文責:平充宏(立志政経舎)