中国視察 文責:松井 堀口 尾崎
今回の中国視察スタッフブログは各場所に分けてご報告させていただきます。
1、「義烏(イーウー)市場」視察
2、「義烏市立芸術学校」視察
3、「在上海日本国総領事館」訪問
4、「上海にて日系メディア関係者との意見交換」
5、「ジェトロでのレクチャー」
6、「IT飲み会」
「義烏(イーウー)市場」視察 文章:堀口みさき(神谷インターン9期生)
【基本情報】
義烏は浙江省の中部に位置する街で、街の半径6㎞ほどが市場になっています。
市場の全てのお店を見ようと思えば、1年ほどかかる(1つのお店を3分寄るとして計算すると)と言われています。
薄利多売(1つの商品の利益を少なくして大量に売り全体として利益が上がるようにすること)を行っており、
家具・建材・インテリア・お茶・おもちゃ等無いものはほとんどなく毎日、世界中のバイヤーが買いつけに来ており、世界でも有名な市場です。
この場所を借りるのには最大5年間までで1メートル2千元(1年に2万元)が必要だということでした。
ここ何年かは競争が激しくなっており、市場が上がるにつれて相場も上がってきているそうです。
文責:堀口みさき(神谷インターン9期生)
「義烏市立芸術学校」視察 文責:松井健太朗(神谷インターン9期生)
2012年2月10日
【基本情報】
1997年に設立された義烏唯一の芸術小学校は、現在7才から13才までの889人の生徒を抱え、教師・スタッフが92名いる。92名のうち、優秀な教員は多く62名が教員で芸術科目に特化したものは22人で、その他30名は生活関係の指導にあたるスタッフである。
生徒の80%が寮に住んでいる為、生活関係に携わるスタッフ数は全教員・スタッフの約3割を占める。生徒はピアノ、民族楽器等の音楽、美術、ダンス、演劇、書道などの13の芸術学科から1つを専攻する。生徒のその技術はと言うと、4つの国営テレビ番組に出演したり、コンテストなどでも優勝したりしている。
生徒は芸術の分野に秀でているだけでなく、国語数学などの分野でも市内では優秀な方である。生徒は制服を着ず、私服を着て髪型なども自由な印象を受けた。この小学校は100以上ある市立の学校の内の1つであり、義烏に住んでいる子どもが通っている。
【感想】
「芸術が知力を刺激する。」
これは通訳を通じて、校長先生が述べた見解です。
また、視察中ある政府関係者と2人で話していると
「産業が近年発展している義烏市だからこそ、中国政府は芸術に力を入れる小学校を設立しました。これは国の政策であり、農村部などの他の都市に必ずしも芸術に特化している学校があるわけではない。」
と彼女は述べられました。
さらに彼女は続けて、どこの公立の学校でもだいたい1000人の生徒に対して100人の教員・スタッフが配置されているとも述べました。
言葉の壁は超えていますし、これらの情報がどれだけ正確なのかという不確かしさも多少はありますが、もしこれらの見解と情報が正しければ、我々は何をここから学ぶべきでしょうか。今回の視察の対象となったのは中国の公立の小学校です。
まず、私は現代の日本における、芸術に対する考えを見直すべきであると思います。そして、学校という教育がなされるコミュニティでこそ芸術教育の重要性に理解を持たなければならないと思います。最後に生徒数と教員数の割合です。
ドイツの哲学者リッケルトの価値哲学では、「真・善・美・聖」が絶対的で永久的な価値とされています。
価値とは、簡単に言うと、AよりBの方が上位だとする時に理由となるものです。
「真」は学問、いわゆる数学などの自然科学にあたり、
「善」は道徳、
「美」は芸術、
「聖」は宗教、にあたります。
他にも、財(技術)と健(身体)の相対価値はありますが、先に述べた4つの価値は全て同様の価値であります。その4つは全て均等の価値なのです。
それなのに、「真=子どもへの教育の対象」と限定する傾向が時々見られないでしょうか。
わかりやすい例にいわゆる受験勉強というものを取り上げてみると、それは「真」に特化され、そこを伸ばそうとするものです。できなければ望ましい次のステップには進めません。この現状がいいか悪いかということを私は今回言いたいのではなく、受験とはあくまで手段であり、リッケルトの価値哲学を見てみれば、あくまで1つの価値を教えているだけにすぎないのです。
今回視察した小学校のように、まだ子どもが比較的幼いうちに、「真」だけでなく「美」にも意識的に教育することに、長期的な目線で考える際に、私は大きな意味があると思います。
均等に「価値」を教育してゆかなければ、子どもは将来大人になった時にまっとうな「判断」ができなくなります。価値観が多様化し、私的な都合で善悪の判断がなされる傾向にある現代の日本においてはなおさら意味があるのではないでしょうか。
芸術以外の、道徳、宗教などにも同じだけ関心を寄せることも当然大切になってくるでしょう。
芸術は関心がある人だけがやるもの、では決してないのです。
親が芸術に関心がない場合もあるので、学校という子どもが教育される場では最低限芸術の教育が保障されないといけないと私は思います。
そして、しっかり子どもを教育できるだけの教員数は確保されなければなりません。
教育はその場その場しのぎの短期的な目線でなされるものではなく、健全な国を創るという背景を持ちえながら、何よりもその子どもの幸せの為に、可能性を引き延ばすことにあると今回の視察を通じて感じました。
我々の歓迎として演奏をし、踊ってくれた生徒達の自信に満ちた目、きれいな表情を見てそう感じざるを得ません。
文責:松井健太朗(神谷インターン9期生)
「在上海日本国総領事館」訪問 文責:松井健太朗(神谷インターン9期生)
2012年2月11日
【基本情報】
2010年10月時点で、上海市の長期滞在邦人数は50,000人を突破し、世界第1位であり、北京の約5倍に達する。非常に早いペースで在留邦人数が増加し、2011年4月には、上海日本人学校に世界初の高等部が開校され、2500名の生徒を擁している。
現在、在上海日本国総領事館は上海市、江蘇省、浙江省、安徽省、江西省の1市4省を管轄している。大使館が通常接受国の首都におかれるのに対して、領事館は首都とは別の主要都市に設置される。ゆえに、中国に関しては、大使館は北京にあり、領事館は上海の他に、重慶、広州、瀋陽、青島、香港にも存在する。領事サービス上においては、領事館は大使館とさほど変わらず、在外邦人の保護や外交事務、情報収集や国際交流・広報などの拠点としてある。
最近では、昨年の2011年9月23日(金)から25日(日)の3日間、日中文化交流イベント「上海ジャパンウィーク2011」を上海外国語大学松江キャンパスにて開催し、AKB48のコンサート、日本語カラオケコンテスト、和服などの伝統芸能のデモ、ブースエリアにおける日本の製品・サービスのプロモーションなどを実施した。
在上海日本国総領事館HP(http://www.shanghai.cn.emb-japan.go.jp/)
【感想】
主に上海市の経済について領事館の方から解説をしていただき、後の30分間程はこちらから質問をさせていただきました。上海の経済についての概要を知れたことは、何も知らない私にとって当然貴重なことでありましたが、自分が何よりも印象に残ったのは、こちらが質問を投げかけた際に対する領事館の方のお答えの仕方でした。その前の上海の経済についての解説の際もそうでしたが、領事館の方が話される話が非常にわかりやすかったのです。落ち着いた雰囲気で、端的に話をされている様子を見ていて、終始憧れに近い感情を感じていました。
上記の基本情報を見てみても、日本と上海との関係はこれからもますます濃くなってくると予想ができます。そのような中で領事の役割は自分が到底想像もつかないところで大きくなっているのだろうなと感じました。
文責:松井健太朗(神谷インターン9期生)
「上海にて日系メディア関係者との意見交換」 文責:尾崎剛(神谷インターン9期生)
2012年2月11日
2月11日の午後からは、上海現地の日系メディア関係者の方と昼食を交えながら、中国の現状についていろいろと意見交換をして頂くことが出来ました。
現地で取材をしておられることもあり、日本にいてはなかなか聞くことが出来ない貴重なお話を聞くことが出来ました。
例えば中国における報道の変化についてです。日本においても多く報道された高速鉄道事故ですが、あの事件も発生当初、国営メディアは報道をしなかったそうです。しかしながら、中国版Twitterのウェイボーの書き込みから、メディアは後追いで報道せざるを得なかったということで、このように今までのように隠し通すことが難しくなったこともあり、報道のあり方については少しずつではあるが変わっていっているとのことでした。
その他にも、農村部と都市部との経済格差の問題もお聞きしました。格差は依然として大きく、また都市部に比べて農村部においては警察の横暴なども目立ち、非人道的な生活実態を強いられている方もいるそうです。また、こういった現状を都市部の住民はある程度知ってはいるものの、現在の生活に満足しているために、農村の実態に対して深く同情している訳ではなく、矛盾を感じつつも、大きく批判することなく生活をしているというのが実態のようです。
また、「去年は尖閣諸島の問題なども明るみになったが、実際のところ中国人は日本人に対してどのような印象を抱いているのか」という趣旨の質問には、偏った歴史教育の影響もあり、意識の根底においてはまだまだ、日本人=悪との認識があるとのこと。しかしながら、例えば日中間で衝突があった際に熱烈に抗議デモなどを行っているのは、ごく限られた人々であり、むしろ若い人々の間の中には日本のアニメやドラマなどを通じて日本に興味を持つ若者も多くいるそうです。
お話を聞いた全体の感想としては、日本において報道されていることは確かに事実の一部ではあるけれども、その背後にある隠れた意図や、残りの報道されていない事実があることもまた確かであることが分かり、実際の現場でお話を聞くこと、感じることの大切さを改めて実感しました。
文責:尾崎剛(神谷インターン9期生)
「ジェトロでのレクチャー」文責:尾崎剛(神谷インターン9期生)
2012年2月12日
最終日であるこの日はジェトロ上海事務所にて、レクチャーを受けさせていただきました。
中国経済の現状についてかなり詳しいところまで、データも合わせて教えていただきました。最近の状況としては、中国は現在世界第2位のGDPを誇っており、名目換算にすると15%という驚異的な成長率を達成している一方で、庶民の財布に直接影響を及ぼす物価の上昇が懸念されているとのことでした。また、失業率に関しては都市部の統計しかなく、農村部を含めると10%にも及んでいるといわれているそうです。
また、その経済成長の裏側で、いわゆる「地下経済」なるものが存在し、そこにおいては高い利回りで政府が関与しない形でお金が回っており、それに伴い返済が滞るケースも多く存在するようです。
しかしながら、依然として高い経済成長を成し遂げマーケットとしては大きいのもまた事実です。その中において日本のメーカーは必ずしも成功しているとは言えないようです。その要因としては一つには本当のニーズを掴みきれていないというお話がありました。日本国内を市場とする場合に他社との差別化をするにはどうしてもたくさんの機能をつけがちですが、例えば自動車市場ならばむしろ中国人好みのデザインを販売する、あるいはスマートフォンであればミドル・ローレベルの低価格の製品を出すなどして、中国人のニーズを掴むことが大切で、日本人相手の感覚ではなかなか成功するのは難しいということでした。
そして、中国の成長については北京や上海などの大都市の成長率は平均値を既に下回ってきており、その代わりに内陸部が勢いよく成長を続けているそうです。そうしたことを考えると、成長の余地はまだまだ残されており、依然として高い成長を続けていくと感じました。
文責:尾崎剛(神谷インターン9期生)
「IT飲み会」文責:尾崎剛(神谷インターン9期生)
2012年2月11日
2月11日の夜はIT飲み会に参加しました。IT飲み会は大阪から始まり、それが日本全国、今や海外でも開催されています。
その趣旨に3つあげられます。
「売り上げを上げるための情報交換」
「売り上げを上げるための人脈づくり」
「飲み会中に売り上げを上げる」
今回は上海での記念すべき第1回目ということで、普段であればなかなかお会いすることのできない方々とお会いすることが出来ました。たくさんの方とお話しすることが出来たのですが、総じて感じた印象が「とりあえずやってみよう」という気持ちを皆さんが持っていらっしゃるということです。頭では行動したいと思っていても、多くの場合は失敗を恐れて何もしないことが多いですが、多くの方が失敗よりも可能性のほうに目を向けて行動されており、この姿勢は非常に学ぶところが多いと感じました。
また、中国は経済が発達し既に飽和状態だという話がされることもありますが、ある方はそれでも隙間は多くあり、その隙間の大きさが日本に比べて大きくまだまだチャンスはあるということでした。改めて中国のスケールの大きさを実感しました。
そして、日本のサービスの素晴らしさも教えていただきました。日本に住んでいると飲食店においてはサービスしてもらうのは当たり前という意識を持っていますが、中国において、上海のような大都市でも店員の対応は日本のそれとは天と地の差ほどあり、日本のサービスはそれだけで十分な強みの1つとなる可能性があるということでした。すなわち、何か特別なことをしなくても、日本では付加価値の付かないものでも、国が変わればそれが強みとなるということであり、将来の日本の主要産業としてサービスなどは1つの選択肢になるのかなと思いました。
今回このIT飲み会に参加させていただいて、立場が異なる方々とお話しすること、そして実際の現場に行くことの大切さを改めて実感しました。
文責:尾崎剛(神谷インターン9期生)