オーストラリア視察 (平成23年10月23~30日)
今回は新選会や龍馬プロジェクトといった団体視察ではなく、個人でオーストラリアに視察にいってきました(毎回の事ながら自費です)。
今回の視察テーマは
①日豪の関わりについて
②教育について
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オーストラリアの基本情報
日本の20倍以上の国土の上に約2100万人が住む。GDPは日本の5分の1ほど。
1770年にジェームズ・クックが温帯のシドニーに上陸して領有を宣言し入植が始まった。1788年からアメリカに代わり流刑植民地としてイギリス人の移民が始まった。1828年に全土がイギリスの植民地となり開拓が進んだ。
1850年代にゴールドラッシュが発生すると中国系の金鉱移民に対する排斥運動が起こり、後の白豪主義につながった。
1901年にイギリスから事実上の独立をした。第二次世界大戦では日本軍の爆撃や特殊潜航艇によるシドニー港攻撃を受け、ニューギニアやボルネオで日本軍と戦い、日本占領にも参加した。
戦後、ヨーロッパからの白人移民は減り続け、国力となる人口増加は鈍った。そこで1980年代からは白豪主義を撤廃し、世界中から移民を受け入れることとし、「多文化主義」へと移行した。
首都がキャンベラとなったのは、シドニーとメルボルンで首都争奪戦の末、妥協案として、シドニーとメルボルンの中間に新たに都市を建設して首都としたため。
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日豪の関わりについて
今回の視察を契機に日豪の関係についてヒアリングをし、調べました。
まず、現地でも感じたことですが、親日感情は高い国だと思いました。データでも7割の国民が日本に対して好感を持ち、英語圏では最も日本語を勉強してくれている国です。しかし、一方で日本に対してマイナスの感情もあります。それは大東亜戦争に起因します。日本はイギリス連邦の一員であるオーストラリアと交戦しており、委任統治領やダーウィンなどで日本軍の空爆や艦砲射撃を受けていますが、日本ではあまり知られていません。その為、北部地域では高齢者中心に対日感情はあまりよくないそうです。
私もあまり知識がありませんでしたが、ダーウィン空襲 や カウラ事件 などは皆さんも知っておかれたほうが良いでしょう。
また、経済的な関係においては、かつては36年連続でオーストラリアの一番の貿易相手は日本でした、私が学生の当時もそう習いました。しかし、今は中国がその座を奪っています。
中国はオーストラリアの中規模の資源開発会社を買収し、資源の確保を図っています。オーストラリアの中央政府も中国の市場を当てにし、日本との貿易の枠を中国にシフトしようとして、日本に信頼をおく地方政府と意見が割れたこともあるとか。尖閣問題で日本と中国がもめた時に、代替資源をオーストラリアに求めたことも記憶にありますが、日本の外交戦略においても、オーストラリアとの関係はもっと重視すべきではないかと感じています。
ちょうど昨日こんなニュースもありました。
2011.11.11 23:43 [米国]
11日付のオーストラリア紙シドニー・モーニング・ヘラルドは、オーストラリアのギラード首相とオバマ米大統領が17日、米海兵隊をオーストラリア北部ダーウィンに駐留させる方針を発表する予定だと伝えた。米国がオーストラリアへ本格的に駐留すれば初めてとなる。軍備を増強し太平洋地域での影響力を増す中国に対抗する狙いとみられる。
同紙によると、基地は新設せず、ダーウィン近郊の施設を拡張する形で利用。米専門家は、射撃や航空機からの降下など、人口の密集した沖縄の米軍基地周辺では実施が困難な訓練を行うことを想定しているとの見方を示した。
オバマ大統領は16日、2日間の日程でオーストラリアを訪問。17日にダーウィンで海兵隊駐留を発表する見通しという。(共同)
日本も2007年3月には、当時のジョン・ハワードオーストラリア首相が来日し、安倍晋三首相と「安全保障協力に関する日豪共同宣言(日豪安保共同宣言)」に署名し、PKOの共同訓練、核・ミサイルなど大量破壊兵器遮断とテロ対策、国境を越えた犯罪予防協力など9項目での協力が成立させています。アメリカ以外の初の安保協力国なんです。
軍事的な交流もちゃんとあるので、経済面でも一定の歯止めがかかるんですね。
そうした観点でいくと、オーストラリアはかねてから日本との自由貿易協定を希望しており、今回のTPP交渉参加もかなり評価をしてくれているようですから、経済、軍事を絡めた今後ますますの親交を持っていくべき国の一つだと思いました。
しかし、現地の日豪交流を進めている方に聞くと、政府レベルや行政レベルでの文化交流などが積極的ではないとのこと。私もお話を聞いていて確かにそう感じました。吹田市もオーストラリアのバンクスタウンと姉妹都市提携していますが、積極的な交流はできていません。ちょっと遠いのと、英語に対する苦手意識と、オーストラリアの経済規模の小ささなどが原因かな、と分析しています。
発展途上国へのODAもいいですが、もっと見える形の、ちょっとわざとらしいくらいの関心の見せ方を日本もしっかり考える時期かもしれません。
何せ、経済的にへたってきてますから、お金目当てのお付き合いは向こうもしてくれなくなります。
中国政府は、中国語を子供たちに学ばせるオーストラリアの学校に報奨金を出していると仄聞しました。日本のアニメなどの文化力のおかげで、まだそれほど効果は出ていないようですが、積み重ねがじわじわ効いて来ます。中国のアメリカでのロビー活動もそうした例の一つでしょう。
日本は歴史を振り返っても外交ベタだと思いますが、今の国会議員さんはちゃんと外交してくれているんでしょうか?
小選挙区制になってから、地元周りばかりさせられている様に見えるのは私だけでしょうか。
オーストラリアは、せっかく親日感情の高い国なんですから、官民ともに様々な分野で交流していけるといいですね。
一市議会議員では無力ですが、今回のご縁をきっかけにできることはしていきたいと思います。
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教育について
今回の視察の一番の目的は、オーストラリアのメルボルン近郊にある、1855年創立のボーディングスクール「ジーロン・グラマー・スクール(GGS)」のカリキュラムと実践を視察することでした。厳格な英国国教会系のブリティッシュスクールで、中核となるコライオキャンパスには5年生から12年生の生徒約1500人が学んでいます。世界の王侯貴族に人気の学校で、過去には英チャールズ皇太子、タイ王室関係者、インドのガンジー一族なども在籍し、日本でも愛子様の留学先候補の一つとして名前が上がっています。
GGSはハイスクールの12年生までの生徒が学んでいますが、ミドルスクール最高学年の9年生が、一年間『ティンバートッププログラム』という特別カリキュラムに参加します。これを受けるために世界中から富裕層の子供たちがこの学校に集まるのです。一部のヨーロッパ貴族の家系では、代々『出生届と同時にティンバートップに願書を出せ』とも言われるそうです。案内してくださった日豪協会の会長のお話では、『日本でいうところの慶応と学習院を足して2で割ったような学校だ』ということでした。
~ティンバートップについて~
GGSのミドルスクールは5年制で、5年生から9年生までの生徒が在籍します。そのうち9年生だけ、男女ともティンバートップという高地にあるキャンパスに移動します。
1学年の生徒が、1年間山の上にこもって、外の世界から遮断された環境の中で、大自然と親しみながら規律正しく暮らし、勉学と集団生活に没頭します。1年を4つのタームに分けて、ターム間の数日間の休暇を除いては、外出もできませんし、インターネットや携帯電話といった通信機器もここでは使えません。
私はこの教育方針に共感しこの学校を訪れました。
少しカリキュラムなどを説明します。
ティンバートップ校には、一学年約220名の生徒が集まり、男女別で14~16名でユニットというグループをつくり、このグループごとに宿舎を与えられて集団生活をします。
1年は4つのタームに分けられており、タームごとにレベルアップするカリキュラムが組まれています。
特別な活動のない日はこのようなカリキュラムで勉強をします。
700 起床~725 朝食~830 教会~855 授業~1035 軽食~1100授業~1230 掃除
1300 昼食
1400 授業~1600 課外 ランニングなど~1800 夕食~1900 自習時間
2030 軽食~2100 読書 〔ベッドで〕~2130 消灯
一見普通にみえますが、16時からの課外活動では週に1度ロングランという活動があって、山の中を何キロも走ってくるような活動もあり、
かなりの体力が必要。
また、1タームでは、山中に一人でテントを張って一晩一人で過ごしながら、親や先生に手紙を書くといったこともします。
また、学校の修理や地域でのボランティア活動などもカリキュラムに組み込まれています。
もちろん激しいカリキュラムなので、怪我人は絶えないそうですが、若いうちにしっかり体をつくるということも大きな教育目標だそうです。
その他の特別な活動としては、
ハイクやカヌークラフト、山小屋合宿、演劇、クロスカントリー、水泳大会など多彩なものがあります。
中でも印象的なのは、ハイクで、最初は一日ですが、最後の方はバックパックを背負って六日間の強行軍です。
男の子も女の子も同じように参加します。
職員室の様子、食堂の様子、学校のプール(池です)
暖房やお風呂は生徒自身が巻き割をして火を起こします。
学生の宿舎。勉強部屋、ベッドルーム、キッチン、バストイレがあります。
授業では日本語も教えており、ほとんどの授業をユニット単位で行います。
学業に体力づくりだけでなく、農業の教育や精神教育も行っています。
彼らはポジティブエデュケーションと名前をつけて
子供たちに、レジリエンス=強さ、耐性、しなやかさ、
を身につけさせたいと考えています。
そのために、
自己認識、自己規律、楽観主義、
ストレス耐性、人格形成、コミュニケーション
の六つのポイントをしぼって、
一年間の合宿のカリキュラムの中でそれらを向上させようと、取り組んでいます。
こうした目的がしっかり定まっていて、具体的な思考方法や問題解決方法を先生が子供に伝えるというのもいいと思いました。
日本の学校では、先生個人の裁量に任せすぎている感じがします。
また、ティンバートップでは、時間に遅れたりすればランニング、先生に暴言を吐けば腕立て伏せ、生活指導の改善が見られなければ、他の生徒のために当該生徒は退学です。
オーストラリアも日本と同じく、公教育のレベルの低下が酷いようです。よってわざわざ高い学費(年間300~400万)を払って、子供たちに苦難を与え、厳しい環境の中で子供を鍛錬させようという人たちが望んでこうした学校に子供を通わせるんですね。
私には、このティンバートップの合宿のような経験はありませんが、自分の学生時代を振り返ると、小学校では県の主催する1週間ほどの船旅の研修に参加したり、中学校では学校主催のリーダー研修や、自主的に参加するジュニアリーダーズクラブ(ボーイスカウトみたいなもの)で、親元を離れ仲間とともに合宿をさせてもらう機会をたくさん与えてもらいました。
こうした短期の合宿ですら、時間の自由がきかないし、わがままな行動ができません、ご飯や洗濯も自分でしないと誰もやってくれません。よって、幼いながらに自立するきっかけを与えてもらった気がします。
また、よくブログで書きますが、大学の時代に海外でであった諸外国の若者たちが語っていた【徴兵制】がこのティンバートップの教育システムと重なって見えたのです。徴兵を経た彼らは、『自分の人生の中でもっとも嫌な期間であったが、もっとも自分が成長した期間であった』と徴兵期間について語ります。
私も現在予備自衛官に登録し、活動していますが、ここでも訓練時には、自分の自由がきかず、つらい想いをします。しかし、その反面終わって日常に変えれば、自由な時間や自分の判断でできる仕事に対して、ものすごく感謝することができるのです。
こうした経験があるので、私はこのティンバートップのような学校にいかせれば、私が過去に受けたような、また自衛隊で経験したような教育が受けれて、
子供たちに良い変化があるのではないかと期待し、自分の目で確かめたくて視察したというわけです。
ティンバートップの先生に1年間で子供たちの何が変わるか?と聞くと
自立して自分のことを自分でしっかりやるようになるとおっしゃっていました。
本校のコライオの先生に聞くと、ティンバートップに行く前と後で生徒の様子や目つきが全然違う、子供が大人になって帰ってくると言います。
1年の合宿を終えた生徒にインタビューして一番多かった答えは、『お父さんとお母さんに感謝できるようになりました』でした。
期待通りです。
皆さんが教育に求めていることはこういう成果じゃないんですか?
受験勉強ができるようになって、いい学校に入らせることが本当の成果ではないはずです。
私は、こういった成果の出る教育制度をつくりたいと考えています。
近年の日本の教育は、『権利や平等』を振りかざし、
愛情のある厳しい人材育成をしなくなった、
できない子供に合わせるようになった、
学校の先生の権威を貶め、指導力を失わせてしまった、のだと思います。
結果、若者のバイタリティーがなくなり、せっかくいい大学間で行っても社会で活躍できない人材を増やしました。
オーストラリアの公教育も様子を聞くとかなり酷いようです。
子供の自主性を伸ばす、自分で考えさせるという教育でやった結果、子供が興味のないことは先生がいってもしなくなったそうです。
ですから、先生は子供の興味をいかに引くか、いかに黙って授業を聞かせるかに必死になっているそうです。
そうした話を聞いても、教育には厳しさと一定の自由の制限が必要なのだと再認識しました。
日本の私立学校もそうですが、わざわざ高いお金を払って私立学校にいかせるんですね。塾も同じことです。
それで、教育費がかかるから子供の数を抑えてしまう。結果、社会の活力がなくなる。
議員になってから、台湾やドバイ、シンガポール、香港、オーストラリアなど経済的に豊かな地域の教育をみてきましたが、
だいたいどこも課題は同じですね。いろいろ見てきた私の中の基準で言えば、日本の教育レベルは中の上くらい。
もっとちゃんとできますよ。
公教育でしっかり人材が育つようにしておかないと、
親の収入や境遇で子供の未来が変わってしまう。
こんな現状を放置している教育関係者が、よく『子供の人権』とか言えるものです。
子供の成長する権利を阻害しているのが、今の日本社会じゃないんでしょうか。
『外国の若者に日本人は心が寂しい』といわれたことが頭から離れません。
子供には、愛情と厳しさの両方が必要。
『ほめる』だけでは絶対に子供は育たない。一定上の厳しさや自由の制約が必要なんです。
それを分かっていて、敢えて厳しくできる親や先生が減ってしまった。
政治家もそういうことを言わなくなった。だから心の弱い、自立できない日本人が増えたのだろうと思います。
私はティンバートップの教育がすべて最高だとは思いません。しかし、かなりのレベルで私が思い描く教育のモデルを実践していらっしゃいました。
今回はたまたまご縁がありオーストラリアに行きましたが、探せば日本にも同じような趣旨の取り組みはあるんだろうと思います。
しかし、高いお金を払わないとこうした教育が受けれないというのでは困るんです。
富裕層だけの教育にしてはいけない。
私は、そこを変えるために政治家になりました。
だから『変えよう!若者の意識』というキャッチコピーを使いました。
そして、一人ではできないから『熱カッコイイ、仲間を集めて』やろうとしました。
吹田の市民のために、この町でそのモデルを作ろうと思いました。
しかし、やるべき方法が決まっているのに、政治家としてやるにはいちいち賛同者を集めないといけなくて、それがまだ十分ではありません。
頑張って集めようとして、活動すればするほどお金がかかって、かえって首が回らなくなる。
教育が一番大切なはずなのに、、、メディアなどはもっと分かりやすい、結果の出やすいところばかりを取り上げ、
国民は自分たちの目先の損得で政治家を選ぶようになっています。
そうこうしている間にもう5年が経ちました。虚しさを感じます。
日本の国が心配です。自分たちの20年後の未来が不安です。
周囲も同じように言っているのに、行動しないから閉塞感だけが広がり、誰も怒ったりしません。
私は、この事態、それ自体が教育の結果だろうと思っています。
人材育成を頑張っている国は伸びています。また貧しさや逆境が人を育てる。
そうやって世界の覇権は移っていくんですかね。どうしようもないのかな。
栄枯盛衰。分かるんですが、日本人はそこを上手くマネージメントして国を維持してきたはずなんです。
私の教育に対する以上の考えは間違っているんでしょうか?もしそうなら私はもう政治家を辞めて、別のことをすべきです。
しかし、もし間違いでないのなら、皆さんも一緒に怒って、行動してもらいたい。
特に、私と同世代以下の人たち。甘えてられる時代は終わるんです。
『怒れ!日本の若者』
周囲の意識を変え、政治の仕組みと教育の仕組みを変える。
そうすれば、また経済も上向きますし、仮に経済が伸び悩んでも心豊かに暮らせる日本人が増えるはずです。
勇気ある政治家のメッセージが必要なんではないでしょうか?
メルボルンで見つけたかつての首相の言葉で締めくくります。