昨年のドバイ、台湾に続いて、第3回の龍馬プロジェクト海外視察に行ってきました(もちろん自費での参加です。)
訪問国は、マレーシアとシンガポール。
今回参加した政治家メンバーは以下のとおり、
神谷宗幣 吹田市議会議員
高岩勝人 金沢市議会議員
倉掛賢裕 大分市議会議員
南出賢一 泉大津市議会議員
川 裕一郎 石川県議会議員
古川裕紀 神崎市議会議員
不破 大仁 石川県議会議員
冨安正直 苅田町会議員
足立将一 吹田市議会議員
河井志帆 東京都中央区議会議員
鳥越 浩一 前苫小牧市議会議員
北は北海道、南は九州まで超党派議員団での視察でした。
今回の運営幹事は、泉大津の南出議員。本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。
全体での行動は5日間、視察研修での学びはもちろんのこと、メンバー同士が寝食を共にすることで、
お互いの絆を深めることの出来た有意義な視察でした。
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今回学びたかったテーマは以下の4つです。
①教育政策
②観光産業(カジノリゾート)
③新都市構想(イスカンダル計画)
④農業、水事業
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マレーシアの基本情報
東南アジアの中心に位置するマレーシアは、マレー半島とボルネオ島の一部・サバサラワク州から成り立つ。日本の面積の9割弱の広さの土地に、
2800万人の人口が住んでいて、
国土の約60%が熱帯雨林で覆われている。
単純な人口比では、
マレー系 (約
65 %)、華人系 (約
25 %)、インド系 (印僑)
(約 8 %) の順で多い。
イギリス植民地時代のマレー半島では、
宗主国によって中国など他のアジア諸国から外国人労働者が奴隷として連れてこられたために多民族社会化した。
イギリスから独立後、イギリス人とともにマレー人から搾取した華僑を追い出したが、それでも居残る華僑に対し先住民であるマレー人の優位性を確立するために一連のマレー人優遇の国策が施行された。
その一連の政策を総称して「ブミプトラ政策」
といい、現在でも継続中。
政体は立憲君主制。
国王は13州の内9州にいるスルタン (首長)
による互選で選出され (実質的には輪番制) 任期は5年。内閣の補佐を受けて行政を担当する。
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シンガポールの基本情報
シンガポールは、
東南アジアのマレーシアに隣接するシンガポール島と周辺の島嶼を領土とする国家
(都市国家)
で、イギリス連邦加盟国である。
面積は710.3km2 で東京23区とほぼ同じ。
人口密度は世界第2位である
(第1位はモナコ公国)
。人口は約508万人
(2010年)で民族構成は、華人系75%、マレー系14%、インド系9%
。
2010年のシンガポールのGDPは約2173億ドル(約17兆円)であり、
福岡県とほぼ同じ経済規模である。
国民一人当たりのGDPは2008年に日本を抜いてアジアトップ。
2011年3月、
英国のシンクタンクのZ/Yenグループが公表した統計によると、ロンドン、
ニューヨーク、
香港に次ぐ世界第4位の金融センターと評価されている。
政治体制は人民行動党の事実上の一党独裁制
(ヘゲモニー政党制)
。このため、シンガポールはいわゆる「開発独裁」
型国家であるといわれ、典型的な「国家資本主義」
体制であるともいわれる。
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教育政策について
やはり今回も私の一番の関心事は教育政策。
マレーシアでもシンガポールでも学校を訪問してきました。
両国の教育の場での共通点
①国家の発展に寄与できる人材の育成をしようという教育目標が明確。
②早い段階(日本の小6くらい)で全国テストを行い、選抜したエリート教育を行なう。
③経済的に豊かになった分、共働きなどが増え、家庭の教育力が落ち、
若い世代の精神的な強さも低下している(日本と共通)
④基になっているのはイギリスの教育制度
①MGSK視察(マレーシア)
13歳から17歳の子供が通う私立の女子高を視察してきました。
多民族国家なので、教室に入った瞬間から生徒の服装などが全く違ったので、少し驚きました。
当然それぞれの言語が違うので、授業はほとんど英語でした。日本は日本語だけで授業が成立し、国内では日本語だけで生活が出来ます。
非常に有難いことですが、その分、外に出る時の弱さがどうしても付きまといます。彼らは当然のこととして英語を使うわけですが、
その分母語の力が落ちてしまうのではないかと思いました。どちらも一長一短があります。
授業の中で、家族のあり方や良い親になるためにというテーマで、
それぞれが自分の考えをプレゼンするというものがありました。
やはり、家族が社会の基本という考え方は日本よりしっかりしているようでした。また、早い段階からプレゼンテーションの練習をさせているのも見習うべき点だと思いました。
感心したのは、生徒に将来の夢を聞くとみんなが即答してくれたことです。目的意識をもって自ら学ぶということを大切にしていることがよく分かりました。
先生にお伺いすると、家庭教育環境の劣化や不登校など日本と同じ課題はあるとのこと。
今回は、我々が学びに行ったのですが、逆に先生方から、日本人の礼儀正しさや道徳心はどうやったら身につくのか、日本から学びたい、
といった趣旨の質問があり、嬉しく思いました。
②TEMASECK POLYTECHNIC視察
(シンガポール)
http://www.tp.edu.sg/main/default.htm
日本でいうところの高等専門学校を視察してきました。
校長先生は元政府の官僚で、日本での駐在経験もあり親日的な方で、快く意見交換に応じてくださいました。
先生方からのヒアリングで強く印象に残ったのは、1965年のシンガポールの独立以来、
経済成長が行き詰るたびに国家戦略として教育方針を大きく変更してきたということを、グラフを使って説明いただいたことでした。
1960年~70年代 生き残り戦略教育
1980年~90年代 効率型教育 知識重視 技術集約型
2000年~ 知識集約型 IT技術などを重視
日本も同じような変遷をたどってきたのだと思うのですが、我々はいつごろにどんな教育をしていたのか、彼らのように説明するのは難しいです。
それは、学習指導要領という教育関係者だけが関心のある計画はあっても、
国民全体に国家戦略として示す人材育成の目標がしめされてこなかったからではないかと感じました。
シンガポールの人口は少なく、彼らは100年後には自分たちの国がなくなっているかもしれないという危機感を共有しているそうです。
よって、教育や国防は国の中心政策であり、
それらの国家予算はぜったに削らないというのが国の方針だとのこと。
また、人が資本という考えのもと、
子供たちの9割近くが日本でいうところの大学教育のレベルまで進学するそうです。
その過程では、選抜試験が多くあり、
エリート教育なども当然に行なうとのことでした。
小さい国が生き残っていくためには、子供たちに「国際市民」
としての意識を持たせ、第一言語にした英語を駆使して外との交流の中でいきるすべを身に付けさせなければならないが、
一方ではシンガポール人としてのアイデンティティーをしっかり持たせるため、
歴史教育や国旗や国歌を尊重する教育をしっかり行なっているとのことでした。
さらに、
少子高齢化で若い世代に社会をどう支えてもらうかという日本と同じ課題を持っていて、日本が何か対策をこうじているのか?
と先生から質問を受けたことも印象に残りました。
校内や授業を見学させていただきましたが、
学生の様子は日本のそれとほとんど変わりませんでした。
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観光産業政策について
昨年オープンしたワールド・リゾート・セントーサをスタッフの方に案内していただき見学してきました。
写真は取れませんでしたがまずはカジノを、
そして国際会議の出来る巨大なコンベンションホール、6つのテーマホテルに、ユニバーサルスタジオシンガポール、
これらがすべて1箇所にあるんです。
つまり、大人はカジノや会議に来てもらい、子供はテーマパークで遊ぶ、
そして家族でホテルに泊まってもらうという国家をあげた集客施設を作っていました。
カジノこそ日本にはありませんが、テーマパークや会議場、
ホテルに関しては日本のものと大きな違いがあるわけではありません。
しかし、それを国家政策としてかためて建設してしまうところに、
日本とは違う戦略性を感じます。
例えるならディズニーランドの横に、パシフィコ横浜、海遊館、
阪神競馬場に尼崎競艇、国立博物館を持ってきて、リーガロイヤルや帝国ホテルも隣接させたようなところです。
また、同時期にマリーナベイサンズにもカジノ作らせて競わせるという徹底振り、
国と産業界が連合して進む高度経済期の日本のような形ですね。
日本でも道州制の話が出ていますが、推進の一つの理由に、
都道府県単位ではこれくらいのまとまった施設を意見を統一して作ることが出来ないから、日本を十くらいの州に区切って、
州単位で世界を相手にこうした観光産業をつくっていこうという事があげられています。
私はこの考えに賛同です。日本は国が大きすぎて身動きが取れません。よって県よりは大きく、
国より小さい規模で政策や開発を進める必要があります。
各県ごとに中途半端な施設を作って、集客を分散させているようでは、世界の競争からおいていかれていくということを、
こうした海外の施設を見ることで再認識できました。
施設見学の後はレクチャーもしていただきました。
・このリゾートでの雇用は正社員で約13000人、パートが15000~2万人。
マリーナベイサンズでも同規模の雇用。そうするとシンガポールの就労人口の約1%カジノ関連事業で働いている計算になる。
・二箇所のカジノの建設に、世界各国18社の応募があった。マレーシア政府は、
それぞれの会社に道路や橋などを作ってくれないかと依頼をした上でプレゼンをさせ、
なるべく政府の投資が少ない形で2箇所のカジノをオープンさせた。
・観光産業の経済効果はカジノが出来る前の年から20%アップ。
・1年間のカジノ来場者は200万人(リゾート全体では1500万人)。40%がシンガポール人、60%外国人。
・カジノが出来て犯罪が増えたといったようなことは一切ない(カジノで起こる犯罪の多くは内部犯)。施設はカメラで完全に監視。
・ギャンブル依存症に対応するため、本人はもちろん家族の申請でも、カジノ出入りできないシステムにしている。
・日本でもカジノ法案
カジノ法案を今秋にも提出 超党派議連
産経新聞 8月24日(水)1
古賀一成民主党衆院議員)は24日、カジノを合法化し施行するための「カジノ区域整備推進法案」をまとめた。
25日に総会を開いて法案を正式決定し、各党の党内審査を経て今秋の臨時国会にも議員立法で提出する。 法案によると、国は地方自治体の申請に基づきカジノ施行地域を指定、認可された民間事業者がカジノを運営する。
議連はカジノ施行地域について「当面2カ所、最大10カ所として段階的に進める」との方針で、当面の施行地域には東京・
お台場や宮城県仙台市、沖縄県などが挙がっている。
カジノで得られた収益の一部は国や地方自治体が納付金として徴収するが、東日本大震災を受けて復興財源にも充てる方針だ。
カジノ議連は昨年4月、民主、自民、公明、みんな、国民新の各党が参加して発足。外国人観光客誘致や地域振興を目的にカジノの合法化、
施行を検討してきた。
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カジノが大きな経済効果を生むことがよくわかりました。問題点を多くあげる人もいますが、それならパチンコはどうなんでしょう。
管理の甘いパチンコの方がよほど害が大きいように思います。日本でも限定した地域にカジノを認めるかわりに、
韓国のようにパチンコを全廃してしまえばいいのではないかと思いました。
新都市構想(イスカンダル計画)
シンガポールとの国境地域にマレーシアが新都市を築いています。
まず、こちらのニュースをどうぞ。
http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/n
シンガポールは、もともとマレーシアから独立した国。数年前、
1965年の独立時にジョホール州の首長をしていた人物がなくなるまで、シンガポールとマレーシアの関係は、独立時のいざこざがあり、
全くうまくいっていなかったそうです。
それが、首長の代が変わって今は過密化したシンガポールの、人と財を呼び込むためにマレーシア国内に新都市を建設しています。
地図でいうと上記のエリア。
ここに経済金融都市、住宅都市、世界貿易港、空港、レジャーパークなどを15年ほどで完成させる計画がイスカンダル計画です。
港は一部が出来上がっており、操業を始めています。どえらい規模の港でした。
まちのモデルはすべて模型で示されていました。開発には、中華系、アラブ系、インド系の資本が入っているようです。
写真のところは2年前まで熱帯雨林だったそうです。それが更地になりすごい勢いで開発が進んでいます。
まるで、万博当時の吹田の写真を見るようでした。国が発展するってこんな感じなんですね。我々の世代は知らない感覚でした。
ガイドしてくださった日本人方が、「こうした発展の過程を子供に見せてあげたい」とおっしゃってましたが、同感でした。
道路も建物も作りは日本よりかなり雑だと感じましたが、向こうは地震がないので問題ないそうです。
ジャスコは日本のものより大規模でした。まちが出来あがってからきたらすごいことになっていると思います。
農業、水事業
マレーシアのプランテーション経営の話を聞きに行く予定だったが、こちらの説明が十分でなく、
視察先が農業パークになってしまっていました。
十分なヒアリングは出来なかったものの、天然ゴムの採取の仕方やゴムの製造方法の見学はかなり感動しました。
私はマレーシアの輸出品といえば、天然ガスとゴムだと学校で習ったので、そう思い込んでいたのですが、
今やゴムよりもパーム油がメインで、プランテーションの7割がパーム油を生産しているそうです。
ゴム パーム油の生産量推移 (単位:1000 トン)
ゴム パーム油
1980年 1530 2573
1985年 1469 4133
1990年 1288 6095
1995年 1089 7811
2000年 615 10839
2005年 1126 14962
2008年(推定) 1320 16000
また、日本と同じく若者の農業離れが進んでおり、マレーシアでも問題になっているとのことでした。
マリーナ湾の湾口をせき止めて淡水化し、将来飲用に供するための可動堰式ダム・
「マリーナ・
バレッジ」を見学してきました。
シンガポールは高低差の少ない狭い国土では水源に乏しいため、
国内の多数の貯水池と隣国マレーシアからの輸入した原水で水の需要に応じてきました。
水道水は国内の貯水池だけでは到底賄い切れないため、
隣国マレーシアよりジョホール海峡を渡るパイプラインで原水を購入しています。
*マレーシア国内のパイプライン
必ずしも良好な関係とはいえない隣国のマレーシアが、1998年には
「シンガポールへの水の供給を停止する」という威嚇的な発言で圧力をかけてきたことや、21世紀に入ってからは
「水の価格を100倍へ上げる」との要求に対応を迫られるなど、マレーシアからの水輸入の契約期限である2061年に向け、
水問題はシンガポールの大きな課題です
(過去には水道管の爆破テロ計画もあった)。
政府はそうした問題への根本的な解決策として、2003年から日本の逆浸透膜を使った高度濾過技術を導入して国内の下水を再生処理し、
飲用水にも利用可能とする「ニューウォーター」(NEWater)計画を開始しており、
2011年には国内の水需要の30%をこの再生水で賄う計画だそうです。
ただ、国民からは下水を処理して飲むということに、違和感を感じるといった意見もあり、
処理した水を一旦ため池にいれて利用するなどの策を講じているとのこと。
50年後の目標は50%をニューウォーターに残り30%が海水利用 20%は雨水。
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まとめ
教育現場の視察を通して、
経済情勢や国際情勢にあわせて日本も明確な国家ビジョンの下で人材教育を行なうべきだと痛感しました。
シンガポールやマレーシアに比べれば日本は人口が多いのだから、
一部のエリート層を選抜し、そのものたちにだけでも戦略的教育を行い、
国のリーダーを育てていかなければ、「平等に」「個性をいかして」
というだけでは不十分ではないでしょうか。
日本にも明確な国家ビジョンと、それを引っ張るリーダー教育が必要だと思います。
観光政策、新都市建設においては、昨年ドバイを視察した時と同様。「世界を相手に競争をしているんだなあ」ということをまじまじと感じました。
日本は中途半端に内需があるので、どうしても政策が内向きです。国民の意識もそうなっています。
しかし、これだけ競争力が落ちてきた今日。経済も産業も教育も、国を挙げてビジョンをつくり、
世界をみて国民全体で取り組まなければ、追い抜かれてから追いつけなくなります。今の勢いでは、アジアの各国に追いつかれるのは時間の問題。
少子高齢化、人口減少を迎える今後、どうやって日本が競争力をもって生き残っていくか?
大きな大きな課題です。
農地にしろ、水資源にしろ、日本には肥沃な国土があり、どこの国にも負けない文化や伝統があることも再認識できました。そして、
国民はまだまだ世界水準でみれば、勤勉であり、一人当たりのGDPで負けているといっても、
総合力はシンガポールに負けてはいないと感じました。
戦争をしたという過去の遺恨はあるものの、日本人のパーソナリティーや技術はまだまだアジアでは評価されています。
日本人でよかった。
しかし、今後もそう思い続けられるように今が踏ん張り時。
この先10年どうするかで、50年先、100年先が決まるような気がします。
日本人として、政治家として、自分たちに何が出来るか!?そういった課題を仲間と共有できた有意義な視察でした。